安心・安全な入れ歯作りの6項目
「試せる入れ歯」を入れる時、みなさんは将来最悪の場合には総入れ歯になるかもしれないということを想定して使ってみてください。また、総入れ歯にはならない可能性が高い人でも、無理にとはいいませんが、体験しておいて損はないと思います。あなたが総入れ歯になったら、どういう状態で入れ歯を使わなくてはならなくなるのかをしっかり体験して、そして考えていただきたいと思うのです。
総入れ歯タイプになると、特に上あごの入れ歯は、天井をおおう床部分があることで、口の中で違和感が大きかったり、食べものの味や温度がわかりにくい、発音しにくいなど、気になるところも出てくるかと思います。そういう入れ歯をどう扱い、使いこなせるかによって、その後作る入れ歯のバリエーションが大まかに決まってきます。
この総入れ歯タイプの「試せる入れ歯」を体験していただくと、次の6つのメリットがあります。そしてこの6項目を確認することで、その後製作する入れ歯にいろいろなことを反映していくことができるのです。
1.歯のお手入れのモチベーションが維持できる
仮に将来総入れ歯になる可能性が少なくても、総入れ歯になったときの大変さを実感することで、今後の歯のお手入れのモチベーション(「がんばっていくぞ」という気持ち)を維持することが可能になります。つまり、歯周病や虫歯で残っている歯を失うことがないよう、日々のケアを頑張ってもらえるということが期待できます。
2.違和感・異物感がどの程度か判定できる
どのくらい違和感、異物感に我慢強い性格なのかが、歯科医も、そして患者さん自身も判定することができます。違和感、異物感に抵抗のない人などは、場合によってはあえて高価な入れ歯にしなくても使いこなせる可能性がでてきます。また、総入れ歯タイプの試せる入れ歯で大丈夫なようであれば、歯にほとんど負担をかけないような入れ歯を作ることができます。総入れ歯は、歯に負担を全くかけないわけですからデザインの自由度はかなり広がります。
3.修正をすることで、快適に感じることができる
悪条件の下で使う入れ歯に慣れておけば、ちょっとでも楽になるような修正を加えることによって、快適に感じることができます。人は楽なところからつらいところにはなかなか慣れにくいものですが、つらいところから楽なところには慣れやすいものです。
特に、発音などは、調整していくことで改善することが容易にできます。入れ歯で発音をスムーズに行うためには、多少のトレーニングが必要となりますが、最初の総入れ歯タイプの入れ歯はそのためトレーニング用入れ歯の役目も果たします。
4.歯の治療のバリエーションが増える
このタイプの入れ歯が使い慣れるようであれば、将来的にもし全部の歯を失ったとしても、こちらもなんとか対応できるので、歯の治療のバリエーションが増えます。思い切った歯の治療ができることになります。場合によっては、歯周病で動いている歯であっても、患者さんが希望すれば治療して残していくことも可能になります。
5.患者さんの精神的負担が軽くなる
ここまでの悪条件をクリアできれば、以後は何をやってもうまくいくので、患者さんも最悪の状態から日に日に条件が良くなる治療に転化するため、精神的に負担が軽くなり、治療にも前向きになりやすくなります。
6.他の選択肢も見えてくる
②から⑤までにうまくなじんでいくことができない場合には、どういう方法があるでしょうか。そういう場合は、入れ歯安定剤で安定させたり、入れ歯ではなくインプラントを選ぶことなどの検討が必要かもしれません。
このように、他の方法の選択肢が上がってくるのも、とりあえず入れ歯を入れてみて試したからだといえます。
この6項目を確認してから、さらにどのような入れ歯が好みなのかを患者さんと相談することにより、その後、上あごのおおっている部分をくり抜いたりしてより現実的に使いこなせる入れ歯を作ることができるのです。もちろん総入れ歯を作る場合でも、このちょっと悪条件から始める、「試せる入れ歯」が有効です。3番目の項目が特に重要になります。
初めに書きましたが、いろいろ試してみて、最後に理想的な入れ歯のデザインでもう一度作り直すというこの「試せる入れ歯」は、入れ歯に悩む患者さんにとっては、とても合理的な作り方の入れ歯だと思います。
「入れ歯治療の新発想」
第1章 「逆転の発想」から考える入れ歯治療
第2章 新発想の「試せる入れ歯」
第3章 日本人に合った理想の入れ歯とは
噛みやすく、薄く、軽い 新開発の金属製入れ歯「ディアレスト」
第4章 入れ歯作りの真髄 私の入れ歯作りに対する取り組み
第5章 患者さんの本音に答えます
Q.自由診療は、保険診療と違って、なぜこんなに費用が高いの?