入れ歯がうまくいく条件とは
多くの方がまず保険の歯科医院で入れ歯を作られているかと思います。その入れ歯でぴったりしてうまく使っている人は、非常に良い先生に出会ったと言えると思います。反対に、なかなか保険で作ってもらった入れ歯がうまくいかないという話もよく聞きます。この違いはなぜでしょうか?
それには2つ原因があります。当たり前なのですが、1つは歯科医師、もう1つは歯科技工士の問題です。
歯科医師について言いますと、入れ歯というのは、すごく単純に言うと、歯型の型どりと上下の噛み合わせ、この2つが重要です。この2つが正確であれば、まずもって良い入れ歯になると言えます。ですから逆に言うと、この2つが良くないと、なんらかの不都合が起こってきます。
そして、歯科技工士について言いますと、歯型通りに変形なく入れ歯をつくれるかどうか、ということが重要です。
私は保険の歯科医院で働いたことがないので、現実の医院での処置など知りませんが、保険を扱う歯科技工所で働いたことはありまして、それは今私が作っている作り方とはかなり違うものであります。
1日に30~40個くらいの入れ歯を10人の歯科技工士で作っていました。流れ作業で工程のある部分を作業して同じような入れ歯を次々と仕上げていました。
1日で入れ歯を仕上げるというのは、変形する可能性が非常に高くなるので、私は今はやりません。
入れ歯で使うプラスティックの材料は最低でも一晩は冷まして固めるというのが基本だと思っています。ですが歯科技工所では多くの入れ歯を作らないといけないので、現実問題としてその日で仕上げないと難しくなります。
そのような意味で入れ歯が変形しやすいという面は多少あるかと思います。
ですから、型どりと噛み合わせが正確なこと、そして変形がないのであれば、保険でも良い入れ歯は十分にできていると思いますが、実はこの3つが非常に難しいことでもあります。
『型どりは2度同じ型はとれない』と言われるくらい不安定なものです。
なぜなら歯ぐきは非常に柔らかい粘膜ですから型どりをするたびに毎回形が変わるからです。歯も360度立体的なものを寸分の狂いもなく同じ型をとるなんて不可能です。
また、噛み合わせもいつも同じ噛み方で患者さんがかんでくれるわけではありません。歯医者さんでかんだ位置と、普段の生活でかんでいる位置が異なれば、なんとなく合わない入れ歯になってしまいます。どれも入れ歯作りに欠かせない、非常に奥深い難しい問題です。
そして歯科技工士もこれまでの経験からよほど丁寧に予測して作らないとまずスムーズに口に入って、ピッタリする入れ歯はできません。ほとんどの入れ歯がドクターの調整なしで患者さんの口の中に入ることはないでしょう。
1本の差し歯や詰め物ならば、全く調整なしで完成できる場合も多々ありますが、入れ歯で調整なく入って、噛み合わせの調整などもないというのは全くないと言っていいと思います。
歯科技工士は調整なしの入れ歯を目指して作るのですが、なかなかそういうわけにはいかないです。ひとつの目安として、30分も調整にかかる入れ歯でしたら、基本的な部分がどこかおかしいと思っていいと思います。先生か技工士かどちらかの問題です。
自由診療ではまず型どりを精密にとるため個人の型どり用器具を作って2回型どりする場合が多いと思います。
この点で保険よりも精密な型がとれます。そして、噛み合わせの採り方はドクターによって千差万別で一定していません。技工士としては、その先生のやり方を理解してなんとか慣れてうまく調整するしかないと思います。
最後に入れ歯の調整ですが、これは保険では月に1回くらいしか調整料金が認められていないようなので、これではとてもピッタリ合った入れ歯の調整することは不可能かと思われます。自由診療でしたら、患者さんが納得するまで何回も調整してもらえるものではないでしょうか。その点は保険と自由診療の大きな差だと思います。
1回で保険の入れ歯でうまくいった人は、かなりラッキーな人だと思います。あるいは、患者自身が乗り越える適応力の高い人だとも言えます。日々の診療でいろいろな入れ歯を見てきまして、当然保険の入れ歯もよく見ますが、もっとこのようにしたらこの入れ歯は快適になるだろうなと思うことは多々あります。
ただ、保険のドクターはそこまで対応していられない状況もあり、技術的に技工士でないと対応のできないところも多いので、仕方がないかもしれません。
なかなか安くてピッタリした良い入れ歯はないと考えていいかもしれません。そして入れ歯に力を入れて取り組んでおられたり、専門的にやっている歯医者さんの方が比較的いいかと思います。
保険の入れ歯が主体の歯医者で自由診療の入れ歯を作っても、技術ややることは同じなので、結果がどうなるか不安だとも思います。
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