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入れ歯のメンテナンス

今年も残り2週間ほどになりましたが、コロナ下でありながらも、治療やメンテナンスにご来院くださいまして、ありがとうございます。

 

入れ歯はあくまで人工物でありまして、毎日使い続けている中でどうしても経年劣化していきます。ただ、少しづつ変化しているだけなので、患者さんにとっては、まるで変化していないように感じるのも無理はありません。しかしながら、3年も5年もそのままの状態を維持し続けていくことは非常に難しいものです。

 

治療後、だいたい半年から1年すると、なんらかの変化があることが多いです。そのため、メンテナンス期間をおおよそ半年として、ご案内しております。

 

入れ歯の中で特に変化するのは、かみ合わせの部分です。

多くの患者さんは、左右のどちらかで強くかんでいますので、その部分を中心に歯のかみ合う表面がほんの少しづつすり減っていきます。自動車のタイヤが数年かけてすり減っていくようなイメージです。自動車の場合は、タイヤ自体を交換しなくてはいけませんが、入れ歯の場合には、すり減った人工の歯だけ交換する方法もあれば、すり減った部分だけ材料を追加して高くして修復する方法もございます。

 

作り手の技工士としておすすめしますのは、歯自体の交換をするのが一番ですが、すり減った部分だけの追加修正するだけでも結構だと思います。費用は少しかかりますが、良い材料もありますし、修正時間も長時間かかりませんので、それでも充分かなと思います。

 

何より、高さがすり減ったままで使い続けることは、かむことだけでなく、ハグキにとっても良くないですし、口の中全体のバランスが崩れ、残っている歯に大きな負担をかけることにつながりますので、そういった意味でも入れ歯のメンテナンスは大切になってきます。合わない入れ歯や、かみ合わせの悪い入れ歯を使い続けることは、長い目で見て非常にリスクがあります。

 

 

コロナ下のために、来院を控えている患者さんもたくさんいらっしゃるかと思います。ですが、一度きちんとセットされた入れ歯をできるだけ長期間、安定して使っていくためには、ぜひともメンテナンスには来ていただきたいと考えます。ちょっとしばらく行っていないという方は、何か悪い症状がでる前にメンテナンスに行くことで、ひどい状態にならない形で処置できることは実は多いです。年明けにでも機会をみて、歯の点検、入れ歯のメンテナンスに来てください。

 

つけ心地のいい入れ歯

技工士の関戸です。

 

だいたいほとんどの方は、肌着やパンツなどは1日着ていられると思います。靴下やメガネとなると、さすがに帰宅されたり、寝る時にははずされていることが多いと思います。

 

この、ほぼ1日着けていられるという状態が、入れ歯づくりでも大切なポイントになります。

 

入れ歯は肌着や靴下などのような生地でできているわけではなく、プラスティックと金属で主に作られています。

 

ですので、単純に、柔らかくなく硬いですし、口の中で完全に固定されているわけではなく、出し入れできるように、やや動きのあるものになります。それが歯ぐきという弱い粘膜の上に触れていますので、異物感があっても決しておかしくない代物です。

 

 

上下とも総入れ歯となると、使いこなすために、それなりにトレーニングも必要ですので、ご自身の努力も大切になってきます。

 

作り手の技工士としましては、できれば、パンツのような感覚で1日中つけていられるような入れ歯を提供できたら、それはとても理想的です。

 

「着けている感覚がしないよ」とか、「もうこの入れ歯なしではいられないの」というお言葉をたまにいただくこともありますが、でも丸1日着けていらっしゃるのかな? なんて、ふと思うときもあります。

 

入れ歯は、ご自身の天然の歯ではないので、どこまで自然に近づけるかが勝負になってきますが、パンツのレベルくらいに快適で自然で違和感のない入れ歯を目指して、これからも作っていきたいと思います。

 

入れ歯が低くなると、前歯がダメになってしまう

ご自身の天然の歯が少なくて、大きめの入れ歯を入れられている患者さんの場合、入れ歯のかみ合わせの部分が削れて、かみ合わせの高さが低くなってしまっていることが多々あります。

 

そのままにしておくと、奥歯がすり減った分だけ前歯に強く当たってきますので、前歯に何らかの影響が起こってくると予想されます。

 

奥歯は上下の力でかんでいますので強いのですが、前歯は上下の力だけではなく、外側に向けた横の力も加わりますので、何百回何千回とかむたびに、外側へ力が加えられますと、動かされることにもつながります。

 

歯はもともと上下の力には強く、横の力には弱いです。

 

なので、奥歯がすり減って、なんとなく以前よりも前歯に力が加わっているなあと思われた際には、ぜひ歯医者に行ってみてください。

 

当医院では、技工士がいますので、その場で「挙上(きょじょう)」と言いまして、すり減った奥歯に材料を追加して、かみ合わせを上げてから、細かい調整を行います。すると、前歯に当たる負担が減りますので、心配がなくなり、しかも多くの患者さんは、なんだか挙上したほうがかみやすくなったと言われます。

 

徐々にすり減って行きますので、ご本人は実感がない場合が多いのですが、元のかみ合わせの高さに戻った瞬間、いい感じに改善したということだと思います。

 

皆さんも、最近前歯によく当たっているなと思われたら、ぜひ調整に行ってみてください。

 

入れ歯の前歯が気に入らない

総入れ歯であれ、部分入れ歯であれ、今使っている入れ歯の、特に前歯の歯並びが気に入っていない患者さんは、たくさんいらっしゃいます。

 

「自分の口元に合ってない」、「顔全体のイメージから見て何かおかしい」という思いをずっと持たれていた方も多いです。

 

ご自身のことなので、非常に深く的確に考えられている患者さんが多くて、言われる通りの状況であることもたびたびです。

 

その悩みをお聞きして、ではどうしたら解決するのかを丁寧にご説明するのですが、やはり実際に実物の歯を並べてみて、納得していただかないと、これはどうにもなりません。

 

注文通りの歯並びに近づけるように試行錯誤を重ねて並べたのち、自宅へ持って帰ってもらい、再びよく確認していただいたりしています。ご自身の判断だけでなく、ご家族の意見も参考にされて、歯並びに変更を加えながら修正していきます。すると、やはりだんだんと良いイメージの入れ歯に近づいていきます。

 

そのうえで一回目の入れ歯をお作りして過ごしていただき、さらなる変更や改善点があれば、次回以降の入れ歯に反映させていくという形で、入れ歯づくりを行います。

 

普通の保険診療の歯科医院では、このような試行錯誤はまず無理だと思いますが、自由診療で費用をかけて作りますし、入れ歯専門の歯科技工士(常駐)がつきっきりで対応しますので、ほぼ希望されたものに近い入れ歯ができあがってきます。

 

美容整形ではないので、あくまで入れ歯でできる範囲内のことになりますが、男性・女性に限らず、歯並びが変わって口元のイメージが良くなることは、患者さん皆さん、気持ちのうえでかなり満足感を得られるようです。

 

 

 

 

入れ歯は口の中のパラリンピック!?

オリンピックが終了し、しばらくすると、パラリンピックが始まりますが、そのパラリンピックに出場する選手のために、さまざまな道具を製作する人たちがいるかと思います。

 

手や足に障害を持つ方々のために、人工物として義手や義足を製作するお仕事として、義肢装具士という方々がいます。おそらくパラリンピックに出る選手の多くは、義歯装具士さんと共に、いろいろな道具をともに製作して、最高のプレーができるように工夫されているだろうと思われます。

 

失った足を補う人工物の足。失った手を補う道具としての手。

 

歯科の中でも、入れ歯を専門に製作する歯科技工士は、ある意味で同じような仕事をしています。失われた歯の部分に、人工物としての入れ歯を作り、審美的そして機能的に回復させる。

 

歯は、手や足とはまた違ったものではありますが、失われた所を人工物で補うという意味では、同じだと思っています。

 

食べるという行為は、毎日かかさず誰もが行っているとても大切な働きだと言えます。その際に支障のないような道具として機能する。これがまず一番の入れ歯の役割だと思います。

 

次に、人は社会生活を送っていますので、人前で口を開けて話をしたり、笑顔で対応することも多いと思いますので、その時に、審美的に問題がないような入れ歯である必要があります。

 

この機能性と審美性という2つの点が入れ歯では大きなテーマになっています。

 

中には、歯が1本もなくなってしまった、いわゆる総入れ歯の方もいまして、ハグキだけで上下の入れ歯をうまく機能させなければなりません。しっかり固定されている部分がまったくないので、まるでバランスボールの上でバランスをとり続けているような状態のまま、入れ歯で食べ物をとらえていかなくてはならない日々となります。

 

あごの形の良い患者さんの場合は、まだ製作しやすいのですが、あごの土手が少ない方や柔らかくて弱い歯ぐきの患者さんの場合には、かなり大変な入れ歯となります。入れ歯の調整回数も期間もかかりますし、痛みなく食べられて安定するまでには、患者さん自身の努力やトレーニングも必要になってきます。

 

われわれ入れ歯専門の歯科技工士は、できるだけ患者さんが使いやすい、過ごしやすい入れ歯にするため、丁寧に細かく調整し仕上げ、さらに実際に使われた中での感想を聞きながら、また調整や修正を加えていくということを繰り返します。このような作業は、きっとパラリンピックの義歯装具士さんも選手も同じようにされているだろうと予想します。

 

人工物は、作ったらおしまいではなく、より快適になるように、時間もかかりますが、細かい調整を繰り返すことでその人に合った製作物に変わっていきます。

 

入れ歯の世界に金メダルというものはないですが、目の前の1人の患者さんにとって最適な金メダルの入れ歯が作れたらいいなあと思いながら、今後も真摯に取り組んで参りたいと思います。

 

パラリンピックの選手もサポートの義歯装具士さんも、日本でのパラリンピックがんばってください!