2025/03/08
2本歯がない症例と言いましても、たくさんの症例が考えられますが、そのいくつかの症例につきまして、くわしく述べたいと思います。
基本的には、歯が2本2カ所に抜けている状態というのは、1本だけ抜けている状態よりも入れ歯は作りやすいものです。
2カ所を利用して入れ歯をとめることができますので、異物感は増えるものの、1本の入れ歯よりも入れ歯の安定感は非常に良くなります。
≪抜けた2本が離れている症例≫
これが一番入れ歯としては作りやすい症例です。考えられるケースとして、前歯と奥歯、右の奥歯と左の奥歯、前歯で離れて2本抜けている症例についてお話します。
●前歯1本、奥歯1本抜けている症例
上であっても下であっても、この症例の場合には抜けている歯の間に何本かの健康な歯がありますので、その歯に負担をかける形になりますが、比較的しっかりと入れ歯はとまります。
ただ一つ心配な点は、奥歯のかみ合わせの調整です。奥歯でかむたびに前の歯がカタカタ動くようでは、人に見られた場合におかしいので、奥歯の調整をしっかりと行い、入れ歯のかたつきがないようにしなくてはいけません。
そして当然ですが、前歯は見た目が大切ですから、バネのようなひっかけるものはつけないで見た目のいい入れ歯を作る必要があります。それには技術が必要になりますが、今ではそのような見た目に入れ歯とわからないような入れ歯も十分作れるようになっています。
●右の奥歯1本と左の奥歯1本抜けている症例
この症例は抜けている部分の位置によって、入れ歯の良し悪しも多少変わります。
中でも難しいのは、一番奥の歯が抜けた場合です。
一番奥の歯が抜けるということは、その奥に歯がないわけですから、入れ歯をしっかりととめることが少し難しくなります。つまりこの部分が外れたり浮いたりしやすくなります。そのため、入れ歯に多少の工夫が必要になります。
反対に、一番奥の歯以外の部分の歯が抜けている場合には、前後に健康な歯があり、その間に入れ歯が入るような形になりますので、左右ともにぴったりと入れ歯が入ります。
そして、入れ歯がはずれたり、浮いたりすることも非常に少なくなります。
左右の奥歯をつなげている入れ歯の床の部分に異物感がありますが、現在ではこの部分を約0.5mmの薄い金属で作ることもできますので、異物感の大きい人には、金属製の入れ歯をお勧めします。
また金属の場合には、金属は硬いので変形しにくく、かむ力にも耐えますし、入れ歯を落としても壊れることが少ないので、長年使ううえでも良い方法だと言えます。
●前歯で離れて2本抜けている症例
この症例は、あまり見られない症例ではありますが、1本だけ抜けているよりも、異物感は多少増えますが、入れ歯としての安定度はいいかと思います。
前歯なので、奥歯ほど強くかむということもないので、見た目を重視して入れ歯とわからないように製作するのが一番大切な点だろうと思います。
中にはどうしても前歯でもかみたいという患者さんもいますが、前歯だけの入れ歯で強くかむと、やはりはずれやすいですし、左右の歯にも良くない影響も考えられますので、あまり前歯で強くかもうとするのはお勧めではありません。
2025/03/08
入れ歯の調整に関しましては、1回で済む人もいれば、十数回調整に来られる患者さんもいらっしゃいます。
それくらい調整は個人差が大きいです。
作っている入れ歯の大きさが違いますし、一部分ではなく、上下の総入れ歯の調整となると、そんなに簡単にはいかないです。
だいたい週に1回の調整で、おおよそ1ヵ月~3ヵ月くらいの期間がかかるとお考えください。
決して調整回数や調整期間が短いから良い入れ歯という訳ではありません。しっかりと長い期間様子を見ながら整えていく方が、予後がいい場合もあります。
早いのがいいのではなく、きちんと調整することが大切です。
もしあまりにも長期間調整を行っても入れ歯が安定しないような場合には、入れ歯自体に問題があるかもしれませんので、改めて一から作り直すことも検討すべきだと思います。
経験豊富な歯医者や歯科技工士であれば、それほど長期間にならなくとも、入れ歯の異常があればすぐにわかりますから、その辺りは安心していただいていいかと思います。
新たに入れ歯を作っていくうえでの心構えとしましては、少しゆったりと気持ちを楽にしていただいて、専門家に一度任せてみようという考えでのぞんでいただけるとありがたいです。
そして不都合な部分が生じた際には、それは率直に申し上げてください。
言っていただけないとこちらも非常に細かな部分まではわからないですから、気になる点についてははっきりと言っていただきたいと思っています。
たまに、ご自身でやすりなどを使って調整される人もいますが、それはやめてください。
削りすぎた場合には、どうしようもなくなる可能性があります。
また、痛みがあるのに、約束の予約日まで我慢される患者さんもいますが、我慢して傷になってしまったりしますと、傷口が治るのに1週間かかります。その間入れ歯が使えないような状態にもなりますので、痛みがある場合には、すぐに連絡していただいて、処置をしてもらってください。
入れ歯はセットしてからの調整もすごく大切です。
2025/03/08
歯が抜けたところに入れ歯をいれようか、そのまま放っておいてもいいかどうか、悩んでいる人は多いと思います。
特に一番奥の歯が1本だけ抜けた人の場合に、それほど問題がないので、長い間そのままにしている人は結構いらっしゃるかもしれません。
一番奥の歯だけが抜けている場合、入れ歯を入れなくても大きな問題はないと考えるドクターと、上下にかみ合っている反対側の歯のために入れるべきだというドクターがいて、意見は2つに分かれると思います。
抜けた歯とかみ合っていた歯が、入れ歯をいれないでかまなくなるとだんだん伸びてくる(挺出【ていしゅつ】)ということもありますので、かみ合っていた歯が単独で生えている場合には、入れ歯をいれたほうがいいように思います。
そして、かみ合っていた歯がない場合や、あるいは、かみ合っていた歯が抜けた歯の手前の歯と少しでもかんでいたらそれほど問題ないかと思いますので、入れ歯はなくてもいいかもしれません。
ただし、歯が抜けた部分の歯ぐきのことを考えますと、入れ歯を入れないと歯ぐきはどんどん減っていく可能性があります。
歯ぐきは、入れ歯を入れてしっかりかみ続けていくことで、圧が加わり、歯ぐきの下の骨が減らないで維持されていきます。また入れ歯を使っていくなかで歯ぐき自身も強くなっていくようです。
もし数年後に手前の歯が悪くなり抜かなくてはならなくなった時に、それまで入れ歯を使っていた人ならば、問題なく2本の入れ歯を快適に使えるようになります。
反対に入れ歯を入れてこなかった場合には、その部分の歯ぐきは減っているでしょうから、2本の入れ歯の安定度は悪くなります。
また初めての入れ歯になりますから、慣れるのも大変です。最初に1本の入れ歯で慣れていたら良い面も多くありますので、できれば入れ歯を入れてみるということがまずいいのではないかと思います。
やってみてどうしても我慢できなければ、やめればいいだけですから。
奥歯ではなく、前歯が抜けている、あるいは間の歯が抜けたというのであれば、これは抜けた状態がいいわけでは決してなく、前歯などは抜けたままだと、見た目に変な感じがするはずですから、やはり入れ歯を入れるというのが基本になってくるかと思います。
あくまで本人様の歯ですから、強制することはないのですが、当たり前のこととして、抜けた部分に歯を追加するというのは、入れ歯であれブリッジであれ適正なことだと思います。
2025/03/08
歯が1本残っている症例というのは、残っている位置や歯の状態によって、作りやすい入れ歯の場合もありますし、逆に少し作りにくい場合もあります。
奥歯にしっかりした歯がきれいに残っている場合には、かみ合わせの高さの基準にもなりますし、入れ歯を安定させる役割もしますので、歯が1本もない状態よりも作りやすいと言えます。
反対に、前歯に1本残っている場合であるとか、歯が斜めに曲がってたり、上に伸びて生えている場合には、他の歯が並べにくくなりますので、入れ歯を作るうえで難しくなってきます。
また残っている1本の歯が弱っていたりする時には、これ以上弱らせないためにも、歯を木の切り株のように短くして、歯として利用するのではなく入れ歯を止める装置として使ったほうが良い場合があります。
その方が長い間歯も残って、入れ歯を固定する役割にもなるケースは多々あります。そうすると、見た目は総入れ歯の状態になるのですが、こちらの方が歯並びも自由に並べられて、かみ合わせも調整しやすいので、メリットはたくさんあります。
ただ、患者さんご本人が1本でも歯を抜きたくなければ、やはり抜くべきではないですし、抜かない形で何とか工夫して入れ歯を作って使っていただくしかありません。
歯が1本だけ残っているうえで、1つだけ問題があるとしましたら、この歯だけが自分の歯なので強い力があり、しかも残っている歯の部分で皆さんどうしてもかみたくなりますので、かみ合わせのバランスをとるのが少し難しくなるという点です。
総入れ歯であれば、前後左右のバランスを自由にとることができますが、1部分だけに力が片寄っているうえに、天然の歯なのでその歯は調整できませんから、かみ合っている歯でなんとか調整しなければなりません。
2025/03/08
はじめからインプラントやブリッジを希望する患者さんの中には、第一に自分が入れ歯になることが嫌だと思っている人も多いと思います。
その意思が固くどうしようもないものであれば、仕方がないのですが、入れ歯専門の技工士としましては、インプラントやブリッジに着手する前に一度は入れ歯も試してみようと思っていただきたいと思います。
なぜかといいますと、確実にインプラントやブリッジがうまくいくとは限らないからです。もしうまくいかなかった場合には、その後の手段は以前よりも悪い状態での入れ歯にするしかなくなります。
それならば最初に試しに入れ歯をやってみるほうが得策で、歯をひとつも触らないで型だけとって入れ歯は作れます。嫌ならはずせばいいだけですし、何とかいけそうならばしばらく続けて使ってみたらいいのです。
それでやっぱり入れ歯よりもインプラントやブリッジにしたければ方向転換できます。
はじめに入れ歯が使えるかどうか確認してから、リスクはあるけどやってみたいインプラントやブリッジにされるのが、賢い方法だと思います。
また、入れ歯は何より見た目に恥ずかしいから、と思っている患者さんもいるかと思いますが、今では多くのメーカーから良い人工の歯が出ていますので、入れ歯だとは思われないですし、逆に元の自分の歯よりも良い歯並びになったと言う患者さんも多いです。
針金のバネのようなものも無しで入れ歯が作れますので、先入観で入れ歯はダメだと思わずに、一度入れ歯専門の歯医者を訪ねてみてください。サンプルなども見せてもらえば、納得できるかと思います。
極端な話、念入りに作られていないブリッジやインプラントよりも、細かく丁寧に作り上げた入れ歯の方がずっと見た目がいいと言ってくれる患者さんも多々いらっしゃいます。