2025/03/05
歯が抜けたまま何年も過ごしていたり、合わない入れ歯で生活してきた患者さんの場合に、歯ぐきが減ってしまって、大きくやせている歯ぐきの方がいらっしゃいます。
このような患者さんは、入れ歯を作るうえでは、非常に難しい状態であると言えます。
健康な歯がまだ残っている人であれば、それらの歯を利用して入れ歯は比較的楽に作れますが、歯が全くない総入れ歯の患者さんの場合には、入れ歯を作った後も相当な調整と慣れる期間が必要になってくるかと思われます。
ただ、歯ぐきがやせていたとしても、しっかりした強い歯ぐきでかみ合わせが安定している場合には、多少入れ歯は動きやすいでしょうが、充分かめて使える入れ歯になるかと思います。
やせてしまった歯ぐきの山は、再び盛り上がってくるということは残念ながらないのですが、そのマイナスを補うさまざまな機能を入れ歯に与えて、できる限り丁寧なかみ合わせの調整と、それ以上はやせないように歯ぐきの管理を定期的にしっかり行っていくことが第一だと思います。
歯ぐきの山のない人の中には、インプラントを植えて、そこに入れ歯を入れようかと考える人もいるかと思います。
最近のインプラントは骨を追加して植えることもできるといいますが、基本的にはそんな簡単にはいかないと思っていたほうがいいかと思います。
失った歯ぐきは残念ではあるのですが、とにかく入れ歯でなんとか過ごす方法をまず考えるのが最初の手段だと思います。
また、歯ぐきがやせていると自分で思っているだけで、われわれから見ると、実はそんなにやせていない患者さんは結構いらっしゃいます。
勝手に歯ぐきがやせているから入れ歯は無理だと勘違いしている人もたまにいます。
そのような方の場合には、ご自身で判断されないで、一度専門的なところに診てもらってほしいと思います。
自分で思っているよりもわれわれ専門家の見立てで十分に入れ歯が作れるかどうかわかりますので、思い切って訪ねていただきたいと思います。
意外とスムーズに入れ歯が使えるようになるかもしれません。
入れ歯は実際に使ってみないと何とも言えない面があります。
歯ぐきが少ないだけで決して悲観的にならずに、チャレンジしてトレーニングしながら使いこなして行くぞという気構えでぜひ挑んでみてください。
2025/03/05
●手前の小臼歯という歯(4・5番目の歯)
この部分の歯が抜けて入れ歯になることはよくあります。
前歯や奥歯はきれいに歯磨きするけれども、この小臼歯部分は、内側があまりきれいに歯磨きされていない場合があります。
そのような理由で虫歯にもなりやすいのでしょうか。入れ歯になる症例が奥歯に次いで多い部分です。
でも手前に犬歯があり、奥には奥歯がありますので、入れ歯になっても安定しやすく、使いやすい入れ歯になります。
見た目を重要視するならば保険のきかない自由診療で審美的な入れ歯にしたほうがいいですが、あまり見た目を気にしないのならば、保険で入れ歯を作ってもそれほど問題のない症例だと思います。
●奥の大臼歯という歯(6・7番目の歯)
この部分の歯が一番ダメになり、歯が抜けて、入れ歯になりやすい歯であります。
どの歯よりも力強い歯であるために食べ物をくだいたり、すり切ったりするには必要で、とても重要な歯です。
ある意味、歯の中で一番働いてきた歯であるがゆえに、一番弱りやすいと言えるかもしれません。
野球選手の奥歯は粉々にひび割れているというくらい、力が加わる歯です。
この歯を失うのは非常に悲しいのですが、失ってしまった後は、しっかりとケアしなくてはなりません。
前後の歯でつなぐブリッジという方法もいいかと思いますが、健康な前後の歯を削るのが嫌な場合には、入れ歯としてしっかりかめるような入れ歯を作れば問題内かと思います。
どの歯よりもかむための機能が求められる位置にありますので、丁寧な調整を繰り返して、バランスよくかめるようにしていくのが最善だと思います。
入れ歯としての強度も必要な部分ですので、奥にもう1本歯がある場合にはその歯を利用してしっかりした入れ歯を作るべきですし、奥に歯がない場合にはどうしても入れ歯は不安定になりますが、前の歯を利用してできるだけ安定しやすい設計で入れ歯を作ればいいと思います。
どうしても入れ歯に慣れないという方は、ブリッジを考えられてもいいと思います。
2025/03/05
入れ歯を考えている患者さんからよく聞かれる質問です。入れ歯の完成までの日数は、だいたい2週間~1ヵ月と考えてください。
入れ歯の大きさやプラスチック製か金属製かなどの材質の違いで異なりますが、3~5回通っていただければ、入れ歯自体は口の中にセットされます。
私どもの自由診療での入れ歯の場合、最初は1回目の型どりをして、次に2回目の型どり、そして3回目にかみ合わせ、4回目に歯並びの確認、5回目に完成してセットできます。
この5回のうちの1つか5つを同じ日にまとめて行えばもっと短い期間で作ることも可能です。
1日の診療時間は長くなりますが、何度も来るのがつらいとお考えの患者さんや遠方から来られる患者さんの場合にたまにそのような取り組み方で作らせていただいています。
また、一部分だけの小さい入れ歯の場合には、型どりしたその日にかみ合わせもとれるので、その次の来院日に出来上がって完成セットも可能です。
入れ歯を作るスケジュールは、患者さん自身の予定もありますでしょうし、こちらの予約の空き状況もございますので、一概には言えないのですが、だいたい1週間に1回の診療を3~5回でできるというのが一般的です。
そして、そこから調整期間に入っていきますが、この調整期間は、個人差があります。
2025/03/05
4本歯がない場合はたくさんの症例が考えられますので、その中でいくつかに絞って、ご説明したいと思います。
まず歯が4本抜けている状態というのは、4本並んで抜けている症例から、3カ所に分かれて1本と1本と2本という症例、1本と3本の2カ所に分かれている症例、2本ずつ2カ所に抜けている症例、4カ所で1本ずつ4本抜けている症例まで考えられます。
さらに抜けている位置で入れ歯の形も変わってきますので、さまざまなパターンの入れ歯が考えられます。以下で詳しく説明いたします。
≪抜けた4本が、4本並んでいる症例≫
4本の入れ歯の場合、この症例が一番難しくなります。
連続して並んで抜けているというのは、その部分が歯ぐきという柔らかい粘膜だけで入れ歯を支えないといけない状態でありまして、その長さが長くなるほど入れ歯としては安定しにくくなります。そのため、入れ歯を成功させるうえで、かなり難しくなるのです。
しっかりした歯があればあるほど、入れ歯は安定しますから、飛び石のように歯が抜けた状態の方が、入れ歯としては成功しやすいです。
●一番奥の歯が4本並んで抜けた症例
これが最も難しい症例になります。まずは入れ歯をしっかり固定することができるかが最初の問題です。
強く固定することを考えるあまり、残っている歯に大きな負担をかけて、歯をダメにしてしまっては大変です。
連続で4本抜けているのが5本になり6本になればもっともっと入れ歯は難しくなりますので。そのためにできるだけ少ない負担で入れ歯を固定する必要があります。
この症例の場合には片側だけの入れ歯は無理で、反対側の奥歯までしっかりと入れ歯の床の部分を延長しないと、入れ歯として使うのが難しいかと思います。
全体的な入れ歯になりますので、異物感は大きくなりますが、入れ歯を入れないと左右のかみ合わせのバランスもとれないですし、片側だけで食べ物をかむというのは、他にさまざまな問題が出てくるかと思います。
かみ合わせの安定を考えて、4本の入れ歯でも食べ物がしっかりかめるように調整していくことが大切だと思います。
かみ合わせが安定すれば、入れ歯が動いたり浮いたりすることも減ります。
1本~3本の入れ歯と比べたらかなり入れ歯の使い方も難しくなるとは思いますが、訓練して慣れていただくしかありません。
ひと言でいいますと、片側だけにかたよった入れ歯になりますので、定期的な調整にも必ず通われたほうがいいと思います。
これはあくまで経験からの話ですが、4本並んで抜けている場合、その反対側に抜けた歯があると、逆に左右のバランスが少しとりやすいので、入れ歯は安定する傾向にあります。
右に4本、左に2~3本抜けている入れ歯の状態の方が前より使いやすくなったという患者さんもいらっしゃいます。
歯が抜けることは良くないことですが、抜ける位置によっては、逆に入れ歯は安定して使いやすくなる場合があります。
●前歯が4本抜けている症例
この場合は上でも下でも、入れ歯として長くなりますので、しっかり固定できるかどうかがまず問題になります。
残っている歯の状態が非常に重要で、あまり強くない歯でしたら、その歯に負担はかけられないので、さらに奥歯の方まで入れ歯の床の部分を延長して作らないといけません。
前歯はおしゃべりする時に、かならず舌先が当たる部分になりますので、できるだけコンパクトに作って小さな入れ歯にしたいと思いますが、まずはカタカタ動かないように止めることと、できるだけ弱い歯に負担をかけないことを優先した入れ歯作りになるかと思います。
3本並んだ前歯のところでも書いていますが、見た目に関しては、とてもメリットがあります。
患者さんの好きな形と色の歯を使って、希望する歯並びに並べる自由度があります。可能な範囲でご希望の歯並びにすることができます。
2025/03/05
この症例は基本的には1本歯が抜けているのと同じように考えていいのですが、奥歯の場合、特に一番奥の歯の場合は、簡単にはいかない難しい症例となります。
●前歯で2本並んで抜けている症例
この場合には、1本抜けた場合とほぼ同じと考えてください。2本抜けているので、入れ歯の床の部分にあたるところが1本よりも長くなり、異物感は倍に増えますが、歯並びは1本よりも並べやすくアレンジできますし、入れ歯としての維持も1本よりいいことが多いです。
見た目重視で入れ歯を作るのが第一課題だと思います。
●奥歯で2本並んで抜けている症例
奥歯が2本続けて抜けているということは、これは非常に負担が大きいので、難しい面がいろいろございます。
もともと自分の歯で食べていたのと、全く同じ様にはいかないということはご理解していただきたいと思います。
入れ歯の場合、健康な歯と比べると3分の1~6分の1にかむ力が減少してしまうと言われます。
あとはできるだけかみ合わせの高さを合わせて調整を繰り返して、ちょうど良いかみ合わせになるように作っていかなくてはなりません。
左右でかむ感じが違ってきますので、この感覚に慣れて適応していくのも大切かと思います。
そして、金属製の入れ歯にした場合には、プラスティックよりもしっかりかめるという声を患者さんからもよく聞きますので、最終的にはその金属製の入れ歯にするのが得策かと思われます。
また、この2本の前後の歯がもう1本抜けるようなことになってしまい、3本の入れ歯になった場合には、これはさらに難しい大変な状態になります。
そのようなことが起こらないように、毎日入れ歯をはずして前後の歯をきちんと歯みがきして健康な歯のままでいられるようにしてください。
●一番奥の歯とその手前の2本の奥歯が並んで抜けている症例
これが2本並んでいる入れ歯では一番難しい症例になります。患者さんの残っている手前の歯の形や並び方によりますが、簡単な入れ歯ではないということはご理解いただきたいと思います。
例えば足を骨折した人がいて介助する場合に、2人の人間が左右の肩を担いで運べば比較的楽に運べますが、1人の人間で運ぶのはそんなに簡単ではありません。ましてや2人骨折した人がいた場合には、1人や2人の人間ではとても同時には運べないでしょう。
入れ歯の場合も、一番奥の2本の歯が抜けた場合には、非常に難しくなります。1本抜けた場合の2倍以上の難しさです。
おそらく手前の2本~3本、症例によっては、反対側の奥歯まで入れ歯の床の部分を延長しないといけなくなるかもしれません。
できるだけ小さく作ったほうが異物感は少ないのですが、そうすると、入れ歯の安定が悪くなり、手前の歯にも負担がかかり過ぎるので、患者さんに合わせて慎重に設計しなくてはいけません。