2025/03/08
5~8本まで歯がない場合には、作る入れ歯の設計やデザインはそれほど大きく変わりませんので、まとめて5~8本とさせていただきます。実際にはたくさんの症例が考えられますので、その中でいくつかに絞って、ご説明したいと思います。
まず歯が5~8本抜けている状態というのは、5~8本が連続して抜けている症例から、3~5、6カ所に1本~3本ずつ分かれている症例、そしてよくある症例として、左右の奥歯の部分に2~4本と3~5本抜けている症例などが考えられます。
抜けている位置で入れ歯の形も変わり、さまざまなパターンの入れ歯が考えられます。以下で詳しく説明いたします。
≪抜けた5~8本が、連続して並んでいる症例≫
5~8本がまとめて抜けている、この症例が一番難しくなります。
連続して並んで抜けているというのは、長くて大きな範囲にハグキがあるという状態で、入れ歯としては安定しにくくなります。
そのため、入れ歯を成功させるうえで、かなり難しくなります。
残っている歯全体で支えながら、入れ歯の部分を丁寧に調整していかないと、うまくかめない入れ歯になってしまいます。
入れ歯に慣れるにも時間がかかりますし、調整期間もそれなりにかかると予想します。
でも丁寧に調整していかないと、さらに負担をかけている歯にダメージを与えて、歯を抜かなくてはいけないようになってしまいますので、定期的なメンテナンスやかみ合わせの調整は必ず行ってください。
●一番奥の歯が5~8本並んで抜けた症例
これが最も難しい症例になります。まずは入れ歯をしっかり固定することができるかが最初の問題です。
強く固定することを考えるあまり、残っている歯に大きな負担をかけて、歯をダメにしてしまっては大変です。
連続で5~8本抜けている状態からさらに抜けるともっと入れ歯は難しくなりますので、できるだけ少ない負担で入れ歯を固定する必要があります。
この症例の場合には片側だけの入れ歯は無理で、反対側の奥歯までしっかりと入れ歯の床の部分を延長して使うのがいいかと思います。全体的な入れ歯になりますので、異物感は大きくなりますが、入れ歯を入れないと左右のかみ合わせのバランスもとれないですし、片側だけで食べ物をかむというのは、他にさまざまな問題が出てくるかと思います。
かみ合わせの安定を考えて、5~8本の入れ歯でも食べ物がかめるように調整していくことが大切だと思います。
かみ合わせが安定すれば、入れ歯が動いたり浮いたりすることも減ると思います。
かなり入れ歯の使い方も難しくなるとは思いますが、訓練して慣れていただくしかありません。
ひと言でいいますと、片側だけにかたよった入れ歯になりますので、定期的な調整に必ず通ってください。
これはあくまで経験からの話ですが、5~8本並んで抜けている場合、その反対側に抜けた歯があると、逆に左右のバランスが少しとりやすいので、入れ歯は安定する傾向にあります。
右に5~8本、左に1~3本抜けている入れ歯の状態の方が前より使いやすくなったという患者さんもいらっしゃいます。
歯が抜けることは良くないことですが、抜ける位置によっては、逆に入れ歯は使いやすくなる場合があります。
●前歯から小臼歯まで5~8本抜けている症例
この場合は上でも下でも、入れ歯として長くなりますので、しっかり固定できるかどうかがまず問題になります。残っている奥歯の状態が非常に重要で、あまり強くない歯でしたら、その歯に負担はかけられないので、さらに奥歯のほうまで入れ歯の床の部分を延長して作らないといけません。
前歯はおしゃべりする時に、かならず舌先が当たる部分になりますので、できるだけコンパクトに小さな入れ歯にしたいと思いますが、まずはカタカタ動かないように止めることと、できるだけ弱い歯に負担をかけないことを優先した入れ歯作りになるかと思います。
3本並んだ前歯でも書きましたが、見た目に関しては、とてもメリットがあります。
患者さんの好きな形と色の歯を使って、希望する歯並びに並べる自由度がございます。
総入れ歯のように完全に自由とはいかないですが、できる範囲内で希望の歯並びにすることが可能です。
2025/03/08
歯を一度に抜くというのは、その状況によりケースバイケースだと思います。
抜く予定の歯の状態にもよりますし、抜く歯の本数にもよります。
基本的には、本当に抜くべき歯だけを抜くのが一番いいかと思いますが、保険診療の場合には、少しずつ抜くということはできないかもしれませんので、一概には言えません。
自由診療の場合には、患者さんの希望で一度に抜かず、順番に1本ずつ抜くことも可能です。
一度に抜いたときの悪影響を考えて、徐々に抜いていくというのは、ひとつの良い方法だと言えます。
指で引き抜けるくらい多くの歯がグラグラな場合やブリッジでつながっている場合など、これは相当な本数を一度に抜く以外にないという場合には、痛い思いをするのは一度だけのほうがいいという人もいますので、そういうケースもあるかと思います。
一度に歯を抜くことで危険なのは、歯を抜いてしまったあとに、おそらく入れ歯になるのですが、入れ歯が本当にうまく使いこなせるかどうかわからないということです。もし入れ歯が使えない人でしたら、大変なのです。
そうならないように、歯を抜く前から入れ歯を作っておいて、入れ歯が使えるかどうかを確認したうえで歯を順番に抜いていくというやり方を、われわれはやっております。
この方法が今まで取り組んできた中でも最も正確で、患者さんも入れ歯に慣れて安心して歯を抜くことができています。
歯を抜いてから入れ歯に歯を追加する作業は1時間~2時間でできますので、その点も何の心配もございません。
ですから結論としましては、一度に歯を抜くのなら、入れ歯を作ってから抜くのが一番いいということになるかと思います。
2025/03/08
入れ歯がどれくらいの年数使えるのか、何年経ったら作り替えなくてはいけないか、というご質問は多くの患者さんからお受けします。
一概には言えないのですが、プラスチックの入れ歯ならば3年~5年、金属製の入れ歯なら5年以上は問題なく使えるとお答えしています。
中には一度作ったら一生使えると思っている患者さんもいますが、たとえ総入れ歯であったとしても一生使えるということはないかと思います。
プラスチックの入れ歯は、プラスチック自体が樹脂で出来ていまして、水を吸う吸水性があるため、どうしても素材として劣化しやすい材料となります。そのためプラスチックは長期間使うと、変形もしますし、着色もし、汚れも着きます。
中には10年~20年も1つのプラスチックの入れ歯でずっと過ごされている人もいますが、まず衛生的な面ではあまり良くないと言えますし、機能性の面でもおそらく歯ぐき部分は少し合わなくなっている可能性が高いですし、かみ合わせもすり減っているでしょうから、もう一つ新しく作り替える方がいいのではないかと思います。
金属製の入れ歯の場合には、金属自体は丈夫で問題ないので、言ってみればずっと使えます。
ところが、金属製の入れ歯でもプラスチックの部分は多いので、この部分が劣化していき大きな変化があった場合には、プラスチック部分だけの修理をするか、あるいははじめから作り直したほうがいい場合もございます。
そして、入れ歯を作り替えなくてはいけない一番多い原因は、残っている歯が抜けてしまったり治療をしなくてはいけなくなり、形が変わってしまうことです。つまり、残った他の歯が変化するので入れ歯が合わなくなってしまい新しく入れ歯を作らないといけなくなるのです。
ですからもしあまり良くない歯が残っている場合には、高価な金属製の入れ歯を最初から作るのではなく、その良くない歯を治療してから最後に金属製の入れ歯を作った方がお勧めです。
費用を全くきにしないという人は最初から金属でもいいと思いますが、プラスチックでも充分良い入れ歯はありますので、まずそちらで入れ歯に慣れていただき、その後もっと快適な金属製の入れ歯にすればよりいいのではないかと考えます。
2025/03/08
上のアゴにくっついている入れ歯のことで、患者さんからもどうやってとめているのか?と聞かれることがたまにあります。
上の入れ歯は、上のアゴの歯ぐき全体に吸盤でくっつけるような状況で止まっています。
上アゴはだ液でぬれているので、その水分の表面張力と、空気が抜けた際の陰圧でハグキにくっつけているのです。
顕微鏡の実験の時に、透明のガラスに液をたらして上からさらに小さな薄いガラスをのせると、その小さなガラスはくっついてとれないようになる、あの状態です。
これを歯科では吸着と言います。
患者さんのアゴの形によって差はありますが、しっかり型どりできた入れ歯ならば、かなりの強さでアゴにくっつきます。
ちょっとやそっと動かしても取れないくらいの強さの人も多いです。
総入れ歯の患者さんの場合には、このような吸着という力でハグキに入れ歯をくっつけますが、総入れ歯ではなく、部分入れ歯の患者さんの場合には、残っている歯に負担をかけて、入れ歯を引っかけてとめるようにします。
これには残っている歯が丈夫でしっかりしていることが大切で、しかも歯ができるだけ残っているほうが、しっかりと入れ歯をとめることができます。
また残っている歯がすごく少なく数本の患者さんの場合でも、残っている位置によっては、非常にうまくとめることが可能となります。
反対に、残っている歯が少なく一部分に偏っていたり、歯があまり強い状態ではない場合には、歯に負担をかける力と、ハグキにくっつける力の両方の力で、何とかとめる方法をとります。
歯がグラグラ動くくらいの状態であれば、入れ歯も動いてしまうので多少使いづらいかもしれませんが、そのような状態でも入れ歯とうまく付き合って、使っている患者さんはたくさんいます。
最終的には総入れ歯になる時も来るかと思いますが、自分の歯をできるだけ残したいというお気持ちも理解できますので、その患者さんの思いに合わせた入れ歯が作れたら一番いいかと思っています。
アゴの土手が浅く、面積も狭く、歯ぐきの弱い患者さんの場合には、強い吸着力は期待できないのですが、上下の歯並びを工夫して、落ちないような調整を繰り返して、しっかりとかませれば、食事するのに支障がないような入れ歯にすることは可能です。
調整期間はかかりますが、入れ歯を使いこなすトレーニングと考えて、取り組んでいただけたら、成功につながりやすいでしょう。
2025/03/05
長年かんだり、力を入れてくいしばったりしてきたからでしょう、歯はだいたい奥歯から抜けることが多く、一番奥から1~2番目の歯の入れ歯を希望される患者さんはたくさんいらっしゃいます。
その中で左右ともに奥歯が1~2本ずつ抜けている患者さんがいます。
この方の場合には、片側だけの小さな部分入れ歯を2つ作るか、それとも左右がひとつながりになった入れ歯を作るか迷うところであります。
2つ作れば、前歯の部分に入れ歯の土台がないので快適ですが、2つ洗わないといけないですし、抜けている歯の前後の歯に大きく負担がかかります。
また、1つながりで1つの入れ歯を作りますと、入れ歯としては左右バランス良くなるので、食べ物をかむ時にしっかりと力を加えることが可能になり、残っている歯への負担も少ないのですが、入れ歯が大きくなるので異物感が増えます。
どちらを選ぶかは患者さんの好みですが、通常はまず1つながりになった入れ歯を作った方がいいかと思います。それで暮らしてみて、不都合な点や我慢できないようであれば、2つに分かれたタイプの入れ歯に変更すればいいと思います。
ポイントは、異物感の問題が一番大切な患者さんは、2つの入れ歯にするということ。
かみ合わせのバランスが大切な方は、1つながりの入れ歯にするということです。
また別の視点から考えますと、奥歯で合計3~4本抜けている状態の方の場合、残っている歯が必ずしも健康であるとは限りません。
もし何らかの治療が近い将来あるかもしれなかったら、その時には2つに分かれた入れ歯は確実に作り直しになってしまいます。
1つながりの入れ歯であれば、治療した歯の部分に合わせて修正したり、あるいは歯を抜くようなことになっても、歯を追加することも可能です。
長期に渡って他の歯に問題がない人は、より快適な小さな部分入れ歯2つでいいと思いますが、将来的なことが少しでも不安な人は、1つながりの入れ歯を使っていくのがいいんじゃないかと思います。