2025/02/22
入れ歯専門技工士の関戸です。
他の歯科医院で作った入れ歯が合わない、痛いということで、新しく入れ歯を作ってほしいと、患者さんから電話をいただくことがよくあります。それでなぜ合わないのか?痛いのか? この原因はいくつか考えられますが、まず基本的なことは、歯医者さんに型どりしてもらった型が合っていない、型が良くないということになります。
そして、第一は、歯医者さんの型どりの技術の差が考えられますが、次に考えられますのは、型どりした型の善し悪しをきちんと判断できているか、また、採った型に石膏を流して、石膏の歯型を作るのですが、そのときに入れ歯を作るうえで、本当にきれいに必要なところまできちんと流せているかどうかで、大きな差が生まれてきます。
その際、一番理想的なのは、実際に入れ歯を作る作り手の技工士が型の善し悪しを判断して、良くなければもう一度先生に型を取り直してもらったり、型をとるうえでどこが必要か、なぜ必要なのかを伝えて、最善の型をとるようにすることです。
多くの歯科医院では、歯科技工士が常勤していませんので、歯科衛生士さんや歯科助手さんが先生からもらった型に石膏を流すというのが通例ではないかと思います。でもここで問題なのは、入れ歯の作り手ではない人が、その型で本当にいいかどうかを判断できるものなのか?
また、型に石膏を流すとき、どこがどのように必要で、注意しなければいけないところはどこか?などを深く理解できたうえで取り扱えているのか?疑わしいのです。
すると、その型で作った入れ歯は、やはり理想的なものにはなりにくいと考えられます。自分が実際に作るならば、とても丁寧に必要なところを最善の注意を払いながら扱うはずですし、さらに言いますと、取り扱う材料もすべてきちんと計量して、いつも安定した状態の材料を注意して取り扱いながら、細かい気泡という泡をできるだけ取り込まないように最善の注意を払って型を流しています。
そうして作られてくる物は、入れ歯に限らず、差し歯でもブリッジでも、やはり、一番基本的な要素として、ピッタリ合った入れ歯や差し歯・ブリッジになりやすいと言えます。
もうひとつ問題なのは、歯医者の先生が採った型が良くなかった場合、なかなか取り直してくれと言えない、つまり先生にダメ出しができないという状況が多々あるかと思います。それでは、良い入れ歯や差し歯にならないですから、うちの院長は、型は私の判断を尊重して、良い型でなければ、良い型が採れるまでやり直してもらっています。ここで気をゆるめると、結局は患者さんにとって、良い入れ歯や差し歯にならないわけで、患者さんが損することになりますし、私もいい加減なものは作りたくないので、はっきりと先生に取り直してくださいと伝えています。
欧米では、歯科医師と歯科技工士は対等で、悪い型どりは躊躇なく、返品されます。これでは作れないと言うことで、プロとしての技工士の立場が維持されています。ところが日本では、歯科医師が圧倒的に上位で技工士は完全な下っ端の立場です。その状況の中で、歯科医院に技工士がいたとしても、先生に型の取り直しを遠慮なく言える技工士は甚だ少ないのではないでしょうか?「何とかして作ります」と答える技工士がほとんどだと思います。
そういうわけで、合わない、痛い入れ歯が作られることは、よくあるのではないかと思っています。
この大切な最初の一歩だけでも、もっと改善されたら、日本の入れ歯たちは、もう1段階、良質な入れ歯になってくれるだろうに。でも現実にはこれはかなり難しいと思います。
『作り手の技工士が直接、患者さんの型を確認できて、ダメ出しもOKで、自分で型流しも行える』という、ひと言で言えば、すごく簡単で合理的でもあり、患者さんにとっても最善の入れ歯につながることなのですが、それがなかなかできていないのがほとんどで、とても残念なことではあります。
当院では、院長の考え方と信頼のおかげで、責任をもって私が取り扱いさせていただいておりますので、ご安心ください。